●ふれあい冨高小学校まちづくり課外授業 | ||||
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講師座談会 - 「冨高小学校課外授業を振り返って」 |
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*1「スギダラ」 3人が中心となって運営している「日本全国スギダラケ倶楽部」の略。杉の魅力をアピールし、日 本中に杉のプロダクツを増やしていこうという運動を展開している。杉の角材を使った巨大テー ブルなど、すでにIT関連の企業や大学の研究室などで活躍しているものも多い。 |
---課外授業を終えて、この熱気は何 だったのか、と関係者の誰もが考えた
と思うんです。行政も学校もデザイ ナーも地元の木材関連業者も、みんな それぞれに目的があって得るところも 大きかった。でも、負担も結構大変だっ
たじゃないですか。それでも突き進ん で行けたのは、何だったんだろう、って。 きっと深いところに意義があったから と思うんですよね。 南雲◆僕は、これはスギダラ( *1 )の活 動の一環と考えると説明しやすいと思 う。授業にどう取り組んだかというよ り、杉と人がどう関わっていくかを改 めて再確認した、って感じがする。 若杉◆そうですね。スギダラのプロダ クトって製品になりにくいでしょう? どこに価値があるのかわかりにくい し、メンテナンスもやっかいだし。でも 今回、産地や地域の人と接して、ネッ トワークやコミュニティができればス ギダラプロダクツも存在し得る、と確 信しましたね。それから、子どもたち を通じて、将来もこういったモノづく りのあり方が理解されるだろうとい う可能性が確認できたのは、我々企業 デザイナーにとっては非常に価値のあ ることだったと思ってます。 千代田◆僕としては、今回「日向木の 芽会」の人たちに会って、こんなに強い 思いを抱いて杉に関わっている人がい る、って知ったことも大きな収穫でし たけど、彼らと一緒に「杉コレ」をやっ て、一気に全国に仲間が増えてきた、っ てのがうれしいですね。 南雲◆それを結びつけているのが杉 なんだよ。素材としてどうかというこ とよりも、人をつなげる力を持ってい る。それこそ杉の可能性だと思うん だ。 若杉◆今、メンテナンスフリーで誰が つくったかわかんない、安全で安心で 便利っていうシロモノばかりじゃない ですか。そんな中で消費者と生産者と の関わりがなくなってきちゃっている けど、今回、やっぱりモノづくりの背景 が見えることが必要だと痛感しまし た。お互いを理解して覚悟を決めてや らないと、こういうモノって生まれな い。世の中がそうなってくれば、もう少 し健全なモノの生まれ方、使い方が出 てくるような気がするんですよ。 南雲◆少なくとも相手のことをちゃ んと考えるとかね。......それって当たり 前のことじゃん(笑) |
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*2「やくざな集団」 日向市デザイン会議の委員長である篠原修教授率いる都市設計チームのこと。命名したのは内 藤廣建築設計事務所の浅野恭子さん。「何かというと徒党を組んで仕事をする」「本流からドロッ プアウトして渡世している」人々のことを指す。現在、やくざ化の輪は各地に増殖中。 |
---今回のこの取り組みって、とても
「まっとうな」社会活動であり、生産活 動だったと思うんです。そこに暮らす 人が地域の素材を活用して街をつく り、子ども、つまり未来を育てる。そこ
にいろんな人の知恵や技能が生かされ て、一緒に生きているんだな、ってこと を実感できる。考えてみるとすごく当 たり前な喜びですよね。 ---杉もいろんな問題を抱えてますけ
ど、どこのまちづくりにも日本の病ん でる部分がいっぱい出てきていて、うま く行っているところは本当に少ない。そ の点、今回みたいに地域外の人を入れ
てここまでやれるケースって珍しいと 思うんです。 |
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楽しい、って仕事の基本だと思う ---でも、どんなプロジェクトでも「人 を育てる」って部分が含まれていると、 将来にまでつながりますよね。 南雲◆社会性が出るよね。今回は、子 どもに教えるってよりも、いい体験と して記憶や身体の中に残ってくれれば いい、って思った。それも、ただ街や山 を見学するだけじゃなくて、まさにま ちづくりのミニチュア版をやって欲し かったんだよ。公共事業では「モノをつ くった後、それをどう使うかが実は問 題なんだ」ってよく言われるけど、今 回も使い方までちゃんと考えてもら うことにした。そこまでセットにする と、「まちづくり課外授業」としては適 切な形になるんじゃないか、と一応は 考えていたんですよ。 若杉◆素晴らしい! 千代田◆南雲さんが理路整然と言う とすごそうに聞こえますね(笑) 南雲◆それと日向の場合、下地があっ たんですよ。コーディネーターである 篠原先生を中心に、県と市、設計者、そ して市民が協力して街をつくっていく んだ、っていうことを何年も続けてき ていた。そういう背景があるから今回 のことも受け入れられた。なかなかな いよ、こんなこと。 千代田◆あのデザイン会議の盛り上 がりもすごいですもんね。 南雲◆バーベキューしたりしてね(笑)。 やっぱり一緒にやってて楽しいんだよ。 楽しいって基本だと思う、仕事するう えで。それも当たり前か。 若杉◆いや、その当たり前のことが、 なかなかデザインやプロジェクトの中 で生かされないことが多いでしょ。 南雲◆だからどうやったら楽しくで きるか、ってのを考えるのはすごく大 切なことなんだよ。 |
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2005年3月某日。内田洋行 潮見オフィスショウルーム内にて。 左から、南雲 勝志、千代田 健一、若杉 浩一の面々。 |
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南雲 勝志 ナグモ
カツシ ナグモデザイン事務所 代表 [略歴] 新潟県六日市町 生まれ 東京造形大学 造形学部 室内建築科 卒業 1987年 ナグモデザイン事務所 設立 同代表 都市環境デザイン会議会員、 土木学会 会員、 I[著書] 【デザイン図鑑】+ナグモノガタリ [主なデザイン分野] 環境プロダクト、家具、照明等 若杉 浩一 ワカスギ コウイチ 株式会社 内田洋行 テクニカルデザインセンター [略歴] 熊本県天草 生まれ 九州芸術工科大学 工業設計学科 卒業 1984年 株式会社 内田洋行 入社 デザイン課、企画課、知的生産性開発課を経て、T.D.C(テクニ カルデザインセンター)部長 [主なデザイン分野] プロダクトデザイン 千代田 健一 チヨダ ケンイチ 株式会社 内田洋行 テクニカルデザインセンター [略歴] 福岡県福岡市 生まれ 九州芸術工科大学 工業設計学科 卒業 環境デザイン研究所、オフィス事業部エンジニアリングセン ターを経て、T.D.C(テクニカルデザインセンター) 在籍 [主なデザイン分野] インテリアデザイン |
※課外授業の詳細はスギダラ家の人びとで紹介しています。ぜひご覧下さい。 |